<連載第1回>(『ビジネス倶楽部』1997年8月号より転載)

探 訪!
 インターネット活用事例

野口壽一(株式会社キャラバン・代表取締役)

 インターネットブームに火が点いて2年ほどが経ちました。
 この間、インターネットの便利さが一般の人びとに伝わっていく一方で、「インターネットはカネにならない」、「安全性が心配だ」、「いかがわしい情報が飛び交っている」、「ホームページは効果がない」、「導入しても使いこなすのが難しい」、等々の見方も根強く存在しています。そして、「もうしばらく様子をみることにしよう」となるわけです。
 インターネットは、本当に社会生活に役に立つものなのでしょうか。特に、ビジネス、それも中小規模の事業体にとって、果たして真剣に検討するに値するものなのでしょうか。
 私は、「値します」、と自信をもってお答えします。
 インターネット先進国のアメリカでは、インターネット上にアドレスを持たない企業は、ビジネスの大道からドロップアウトしていると見なされ、「ホームレス企業」とからかわれるほどの状況です。
 考えてみてください。電話やファックスなしでビジネスできますか? インターネットが、電話やファックスとならんで、それらの機能を統合する通信手段として主役に躍りでてくる時代、インターネットなしではビジネスできない時代が、日本にも来ようとしているのです。

 役立つ、メールとホームページ 

 業務でインターネットを利用する場合、業種に関係なく役立つ有用な機能は、メールとホームページでしょう。
 メールは、もともとはe-mail(イー・メール)、つまりエレクトロニック・メール(電子郵便)のことで、パソコンでやりとりする郵便のことです。
 通常の郵便と違って、世界中に張り巡らされたインターネットの専用線および公衆電話回線を伝わっていく電子信号ですから、メールは瞬時に相手に届きます。また、電話と違って、メールを溜めておくことができますから、相手は好きなときに見ることができます。相手も自分もお互いの時間を拘束することがありません。
 インターネットのメールは全世界と低料金で交信できる利便性が強調されています。そんな事情から、「取引先はほとんど国内だけだから、当社には関係ない」と思われる経営者の方も多いと思いますが、実は、メールは、取引先や営業先に限らず身近な関係者、たとえば社員やその他の会社関係者との間で活用すると、いままで考えられなかった利便性が生み出されるのです。
 もうひとつの、ホームページは、WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)と言われる機能です。これは、インターネットを通じて、全世界にむけて24時間いつでも情報を提供できる技術です。一度情報をデータの形にしてインターネットのサーバー(インターネットと専用線で接続されたコンピュータ)に配置すれば、後は低コストで効果的に情報提供が可能となります。しかもこのWWW技術は双方向通信を可能とするので、アクセスしてくる人(通常の広告などでは読者に当たる人)、つまり顧客とのダイレクトなやり取りがとても簡単に実現できるのです。

 パソコンとインターネットは中小企業の味方 

 インターネットがこれほど急速に普及した理由はいろいろありますが、最大の理由には、パソコンの普及があげられます。
 パソコンはダウンサイジング技術の産物です。この場合のダウンサイジングとは、それまでのオフコンやミニコンと呼ばれるコンピュータの機能をより小さなコンピュータで代替することです。機能を低下させず(場合によっては高機能にさえなり)、サイズや価格が小さくなりました。
 インターネットは、相互に接続されたコンピュータに上下のランク付けをしない平等主義を技術の本質としています。インターネットの世界では、大企業も中小企業もコストやチャンスの面でまったく平等なのです。
 このふたつの理由から、パソコンとインターネットは、中小企業にとって福音とも呼べる技術革新なのです。ただ、これらを使いこなすのに、若干の勉強が必要なだけです。
 
 次回から、この素晴らしい新技術を賢く活用している企業の実例をシリーズでご紹介いたします。


筆者が運営するホームページ「246コミュニティ」の表紙
インターネットを使って起業やビジネス開発の支援を行っている
URL: http://www.caravan.net/246c/


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