創造企業
◆◆◆◆◆ 株式会社キャラバン-東京都世田谷区
代表取締役社長 野口壽一さん

インターネットが可能にする出会い、
広がりゆく人の輪、そしてビジネス
野口壽一 社長

野口社長
株式会社キャラバン
東京都世田谷区上馬2-25-4 FLEX三軒茶屋2F
TEL:03-5486-6917
URL●http://www.caravan.net/



株式会社キャラバンは、96年までは翻訳や印刷関連の情報処理業務が中心だった。その頃は社長の野口さんの他には「キャラバン・レディーズ」5人の元気のいい女性たちと10人ほどの在宅作業者で切り盛りしていた。パートと在宅者からなる興味深い会社形態ではあったが、一般の会社の域を出るものではなかった。ところがインターネットを積極的に取り入れるようになって多くの支援者が集まるようになった。ボランティアで始めた起業家支援のインターネット組織「246コミュニティ」は300人を超える規模に達し、高齢者や商店などを応援する「世田谷NET」も全国的に注目されている。この不況下で着実な業績を上げているキャラバンは、パソコンやインターネットをどのように活用し、事業を展開しているのだろうか。

  関心はラジオから世界へ

鹿児島県出身の野口さんは、多感なラジオ少年だった。手製のゲルマニウムラジオでさえ北京放送が聴ける土地柄。リスナーカードが欲しくて中学生の時、北京放送局に手紙を書いた。1度書いただけなのに大学生の時までいろいろな印刷物が送られてきたという。
 「毎年送られてくるカレンダーの中に、ある年ウィグル族の若い男女が草原でダンスしている写真があったんです。それを見て僕らと同じ顔をした人々がちがう格好をしているのにとても驚きました」
野口さんは豊かな自然とそこに住む民族に強く惹かれたが、大学に進学し、いろいろな活動に忙しくなるうちにいつしか忘れていた。
 「79年にソ連軍がアフガニスタンに入り、マスコミはアフガニスタン一色となりましたが、軍事情報だけで一般の民衆については何も報道されません。おかしいぞと思っている時に、たまたま駐日アフガニスタン大使と知り合い、積年の思いが一挙に吹き出しました」
当時アフガニスタンは日本からの取材は断っていたが、大使の尽力により、80年夏に日本人ジャーナリスト第一号として入国を果たし、ルポルタージュを出版した。その後は両国の交流につとめ、アフガニスタンとの合作記録映画作りにも参加している。
 「訪問のたびに日本との貿易不均衡を何とかしてくれ、とアフガニスタン政府から言われました。輸入は何億ドルもあるのに輸出は絨毯やラピスラズリ(貴石の一種)、薬草くらいしかなく、輸入の100分の1以下でした。これを少しでも変えようと、キャラバンを作って奈良のシルクロード博覧会にアフガン物産を出展したのです。
 この頃です。上田卓三会長にお会いできたのは。アフガニスタンを初め、いろいろなことで本当にお世話になりました」
懐かしそうに語る野口さんだ。


 いち早くDTPを導入



今DTP、コンテンツ制作等で新分野進出を支える「キャラバン・レディース」の皆さん
 アフガニスタンとの貿易の他、翻訳やマニュアル制作も手掛けていたキャラバンでは、DTPに対応する日本語プロ用編集機としてマッキントッシュUを早い時期に導入している。
「当時は非常に高価なシステムでしたが、これで海外に輸出する機器の英語版マニュアル作りを始め、DTPの素晴らしさを知りました。さらにマックの日本語処理能力が向上し、アメリカから送られてくるデータを元に日本語マニュアルを制作できるようになりました」
 DTPは「デスク・トップ・パブリッシング」といい、日本でもここ数年で急速に普及している編集・印刷技術のことである。パソコンを使うため、時間や経費を大幅に削減することができる。
 「キャラバンでは、九五年の初めにインターネットに接続して活用法の研究を始めました。その結果、インターネットは究極のDTP、つまり本当の意味の電子出版を可能にするものだと気づいたのです。印刷物はコストがかかりますが、インターネットは非常に安く、しかも双方向なものです。無料でいろいろなサービスを行い、キャラバンの認知度を高め、顧客を広げていける。ビジネスにもプラスになると直感したんです」
 キャラバンは無料で起業家や会社経営者を助ける互助組織「246コミュニティ」や、「世田谷NET」等を立ち上げ、応援している。新分野に乗り出すにあたり、豊かな人材と設備があったのが有利だったと野口さんは語る。
 「インターネットは、もともと人が協力し合うための水平型ネットワークで、弱い者、持たざる者が助けられる世界です。あらゆる組織にとって利用価値は無限大です」