●日経産業新聞<2002年(平成14年)10月28日(月曜日)付>

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ネットで交流、起業支援

会員400人超海外からも

 インターネツトを使った新しいビジネスを立ち上げる起業家を支援しよう――東京・世田谷の喫茶店に集まるベンチャー経営者や研究者を発起人に「246コミュニティ」が誕生したのは1996年1月。電子メールを中心とした交流会は、参加者420人の電子コミュニティーに成長、会員同士が新たなネットワークを作るなど広がりを見せている。

 「246」は国道246号の意味。米ハイテクベンチャーが集積するボストンの「ルート128」をもじった。設立当時はネットを利用したサービスの黎明(れいめい)期。「246がネット時代のハイテク集積地帯になるかもしれないという思いがあった」。246コミュニティの世話人の一人でネット関連事業を手がけるキャラバン(東京・世田谷)の野口壽一社長は振り返る。

 発起人は5人。野口氏のほか、ベンチャー企業を支援するエンジェル、元ベンチャー経営者、マルチメディア研究者、大手電気メーカーの技術者という顔ぶれだった。新年会での会話から青年二人の起業を支援してみようという話になり、「電子起業家を応援する任意団体」として246コミュニティが誕生。パソコン通信などで知り合ったベンチャー経営者や技術者、大手メーカーの研究者などが加わった。

 以来6年。この間、渋谷ビットバレーブームやネットバブル崩壊などネットベンチャーを巡る環境は激変してきたが、246コミュニティは着実な活動を続けてきた。現在も246沿線の会員は多いものの、電子コミュニティーらしく北海道や沖縄、さらに欧米からの参加もある。

 会員は起業家や起業家を目指す人が半数。残り半数はベンチャーキャピタリスト、経営コンサルタント、会計士、税理士、弁護士など起業家を支援する人たち。活動の中心は会員同士が電子メールで情報を交換するメーリングリストだ。

 「スタートアツプのきっかけとなる環境を提供できればいい」。発起人の一人であるメタリンク(東京・世田谷)の中上崇社長はコミュニティの役割をこう説明する。中上氏はベンチャー起業家の先駆けとして活躍した経営者でエンジェル。「以前は日本ベンチャー協会などが果たしていたエネルギー補給の役割を、今はネットワークが担うことができる」

 コミュニティヘの参加希望者は自分のプロフィルやコミュニティに何を望むか、どんな貫献ができるかを表明、データは会員に公開されている。匿名主義をとらないことが無責任な発言を防ぐ効果がある。やはり発起人で半導体関連のマーケティング会社エムエスシー(東京・世田谷)を経営する中村正規社長は「自立した個人の緩やかな集まり」と評する。

 メーリングリスト上では自らの経験の紹介、技術や資金、会社運営などに関する相談や助言などのやりとりが活発だ。「日本製の優れた車いすがあるので紹介したい」という書き込みには「サーバーを提供しよう」 「英語化作業をやろう」と即座の反応があり、1週間程度でホームページが完成した。メールのやりとりから出資者が現れ、共同で会社を設立したケースなど、実際の起業につながった例もある。

 会員が実際に顔を合わせるオフミーティングは設立当初はかなり頻繁だった。最近では全体的な会合は年1−2回程度。任意団体であり会費も依然無料。世話人はいるものの、代表者はいない。

 7年目を迎えた246コミュニティだが今後の課題も「まず継続していくこと」(野口氏)。会員数は400人強で落ち着いたが、派生した新たなグループも誕生。高齢者へのパソコン普及を後押しする「コンピューターおばあちゃんの会」への協力など他の団体との連携も広がっている。

 マイコン組み込み機器をテーマに活発に議論していた技術者たちが97年に設立した別個のメーリングリスト「Emblem」はすでに約300人の技術者が参加している。他の団体などに組織運営などのノウハウを提供していくことも今後の役割の一つとなりそうだ。

(渡辺園子)